「有佐、何かあった?すっごい嬉しそうだけど」
「んん~?自分に素直になれないももちゃんには分からないわよぅ」
今朝の事が顔に出ていたのだろう。慌てて誤魔化した。
「……っな!素直になれないってどういう事よ!!」
ほら。簡単に引っ掛かってくれた。
まぁ、この顔が可愛いっていうのもあるんだけどね~。
「言葉のままよ?」
「……~っ!何の事よっ!」
あぁもう、こんなにムキになって可愛いな。ホント。
「ほら、あれ。昴の事」
ちょうど目の前に家から出てくる昴がいたので指差して教えてあげた。
「……~~~!!!」
あら、真っ赤になっちゃった。
「あ、お早う。有佐、もも…さん……?」
真っ赤になって固まっているももを見ていぶかしんでいる。
「あんたも罪な男よのぉ~」
「は?何言ってんの有佐」
「“さん”くらい取って呼んでやんなさい。そこまで他人行儀でもないでしょ」
勝手に昴の背中をぐいぐい押してももの方を向かせる。おい、そろそろ起きろもも。
「…良いけど、ももさんは良いのか?」
あぁ。何かおっちゃん分かっちゃったかもしんね。
さっさと素直になりやがれこの2人。
「良いに決まってるでしょ!ほら、分かったらさっさとそこで固まってるツンデレ解凍して学校に行く!遅刻するわよ!!」
捲くし立ててさっさと1人で歩き出す。
こうでもしないとくっついてくれなさそうで、凄くもどかしい。
◆
「せんせぇ~、今日の小テストちょうムズぃぃ~~」
伏見先生が若いから年上好きの女生徒に人気なのは認めよう。
…認めても見たくないものってあったのね……。
「…えぇと、それは―――」
なに普通に解説してんだこの天然馬鹿教師!!
自分勝手な嫉妬心が立ち上がった。
「伏見先生!」
「え、あ、楠樹君…どうしたの?」
「ちょっと楠樹ぃ、あたしがまだ質問してるんだから割り込まないでよぉ」
あんたは何でそんなに甘ったるい喋り方なのよ。気持ち悪い。
「先生、ちょっと来てもらって良いですか?」
「ちょっと楠樹ぃ、先生はあたしと話してるんだってぇ。…ちょっと、聞いてんの?」
ギャルに肩を掴まれ、伏見先生から無理矢理引き剥がされた。
「……あんたねぇ、私は…っ!!先生のっ…!」
あ。
何をしようとしてるんだ、私は。
今朝の告白とか、全部がパーになるようなことを、今しようとしている。
「先生の、なによ?」
「せ、せんせいの……」
言ってしまったら、きっと楽なんだろう。
楽に、なれるんだろう。
「先生の…か、」
「はいはい、2人とも!もうチャイムなってるから教室戻って!!」
先生が私の言葉を遮ってきた。
……危なかった。
脱力感が体を襲う。ギャルが帰って、2人きりになってへなへなと腰が抜けた。
「せ、せんせぇ……」
「ほんと、こんなこと知られたら退職もんだから言わないでね」
「は、はい…」
「でも、妬いてもらってちょっと嬉しかった」
「はい?」
「…何でもないっ!」
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