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はいはい、創作創作。
「…ここでいいや。昴帰っていいよ。」
「まじで?」
「うん。ももに怒られそうだし。」
「な!」
電柱の陰からおかっぱに近い黒髪が声をあげて出てきた。
「あ、渥美!?」
「私はこれで。昴はちゃんともも送ってから帰るんだよ!じゃ!」
「な、なんだよ!空気読んだと思うなよバカ有佐!」
走る私の後ろからももの声が聞こえた。
手を上げ軽く振った。
だいぶ走った。
止まって辺りを見回してみるとそこは私が住んでいる町ではなく、隣の町だった。
「ひきかえそう。」
そう思い、振り向くと、そこには黒いロングコートにマスク、サングラスをかけた不気
味な人…もとい不審者が立っていた。
サングラスの奥の瞳がぎらりと光る。
…逃げなきゃ。
不審者側に向いていた足を反対方向に向かし、走る。
不審者も追いかけているのか、足音がついてくる。
怖い。
焦って走っていると足が縺れて転んだ。
恐る恐る振り向くと不審者がこっちをぎらきらした目で見つめていた。
「…い、いや。…い、イヤーッッッ!!!!」
「ッッらあああ!」
!
突然伏見先生が不審者に向かって飛び蹴りをした。
「ふ、ふ、伏見、先生!?」
「逃げるぞ!」
焦ったように伏見先生は私の手を引き不審者側とは反対方向に進んで行った。
「…ふ、伏見…先生、あの…手…」
「っごめん!手、離すの忘れてた…」
「い、いえ…」
先生がさっきまで握っていた手の温もりを確かめながら少し恥ずかしいのでうつむく。
「…顔赤いぞ?熱でもあるか?家に親御さんいるか?」
「ね、熱ないですよっ!家に親います!」
先生が顔を近づけ、心配そうな眼差しで私を見つめる。
「じゃ、送るよ。家すぐ近くだし、ちょっと待ってて、車取り行ってくる!」
「あ、あ、はい。」
…な、なんか…彼女みたい…
それから3分程で先生が左ハンドルの黒い軽自動車でやってきた。
「乗って乗って。もう遅いし、親御さん心配するから。」
「は、はい。よ、よろしくお願いします。」
左ハンドルって…家お金持ちなんだろうな…
なんて事を考えながらちゃっかり助手席に乗り込む。
…理科室みたいなにおいする。
「家どこだっけ。」
「えっと、東町です。」
「東か…了解。」
ほんと彼女みたい…い、いやこれは恋じゃないし!
で、でも…助けてくれた時はキュンってなったけど…違う!違う!
「…楠樹君…どうかした…?」
「な、なんでもないですっっ!」
「ならいいんだけど…」
「…えへへ…あ!家あそこです!…あれ?家真っ暗…」
「ほんとだ…親御さんいるんだよね?」
「た、たぶん…あ!」
「ど、どうしたの!」
「…今日…両親町内会の慰安旅行でした…」
「えぇ!?」
とんでもないことを思い出してしまった。
「か、鍵持ってない!?」
先生が焦ったように口を開いた。
「か、かぎ…ってな、ない!!」
「えぇ!?」
た、多分転んだときに落としたのだろうっ!
…野宿…!今日私野宿!?
「…く、楠樹君!」
「はっはい!」
…声が裏返る。
「ぼ、僕の家く、来る!?」
「!?」
「なっも、もちろん、なんにもしない!なんにもしない!なんにもしない!」
私はすかさず先生の家と野宿をてんびんにかけ、
「せ、先生、よ、よろしく、お、お、願い、しますッッ」
返事をした。