戌を観察して早2日。
え?早はいらない?
私の中ではこの2日は2ヶ月だった。
戌は愛子にアタックする気配がない。もちろんやふみさんに手を出す気配すらない。
まあ、手を出したら命はないと思え。
…でも、
でも、おもしろくない!
こんなの退屈すぎる!
…そうだ。
☆
「おい、戌っころ!」
「呼び方酷くなってないか?」
「次のテスト、赤点取ったら愛子見るの禁止!」
我ながらにしてはいい案だ。
「…は!?なんでお前に決められんだよ!断る!」
「…イヤ?」
「イヤだっつの!」
「じゃあ紐無しバンジー。」
これも素敵だと思う。
「なんか全体的に違うぞ!」
「しょうがないな、じゃあ両方やれ!」
「意味わかんねぇんだけど!」
「だから、赤点取ったら紐無しバンジーと愛子見るの禁止。じゃ、シクヨロ!」
逃げるが勝ち。
「古っ!じゃなくて、待て南雲!」
☆
…冗談…だよな…紐無しバンジー
第一、俺はテスト勉強なんてしないんだ。
毎回勉強なんてしなくてもぎりぎり赤点は逃れられている!
さらに、紐無しバンジーなんて非現実的なこと出来るわけ…
…南雲ならやりかねない。
とても不安だ。
…保険として一応勉強でもしておいた方がいいのではないか?
…あくまで保険として!
べ、別に紐無しバンジーが怖いとかじゃないから!高い所超好きだから!
愛子さんのためだから!マジで!
そ、そうと決まればまず計画を立てねば!
テストまであと何日だろう。
1、2、3、4、5、6、7…1週…間!?
いままで何してたんだ、俺!勉強しろよ!
それに南雲も南雲だ!もっと早くに言え!
…このままじゃ、俺死ぬかも。
☆
俺は朝一で頼みのツナに会いに行った。
「ふ、伏見せんせ。」
「お、戌居君。君が職員室なんてめずらしいね。どうしたの?」
「物理を、物理を僕に教えませんか!!僕の命を助けると思って!」
一気に頭を床にたたき付けた。
「っ!?頭上げて!みんな見てるから!ど、どうしたの!」
「こ、殺されるんです!」
「はい!?!」
☆
無事にテストと地獄だった一週間が終わった。
伏見の野郎、男には容赦しないようだ。
ぐったりしていると南雲がニヤニヤしながらやってきた。
「戌っころ。テストの結果が出てるみたいだぞ。あっはっは!」
「お、お前、もう見たのか!?」
「見てないけど?」
「なんだよ!」
「戌っころ先行くぞ!やーい、やーい!」
「あ、ちょ、待てよ!」
☆
「…」
南雲がテスト結果が貼り出された模造紙をアホみたいに見つめていた。
「な、なんだよ、口開けて。」
「…こ、これ…」
「…え…?」
そこには今までに見たことがない色の点があった。
『桃』点だ。
黒字
桃字
赤字
で別れたテスト順位に結果を見た生徒もア然でった。
「ど?驚いた?」
声が聞こえる方向を見ると、伏見先生が楠樹先生と一緒にこちらを見ていた。
「ふ、伏見先生これ!」
「楠樹君が考えたんだ。新機能追加みたいな☆」
「え、へへ。」
楠樹先生は照れ臭そうに頭を掻いた。
「南雲君、桃点なら大丈夫だよね?」
「…はーい。」
伏見先生、一生付いていきます
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