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はいはい、創作創作。
『ゲームしよう』
そう書かれた紙切れが授業中に回って来た。
誰だ?
筆談といえば押見だが、本人はしっかりと学生の本分を実行中だ。
軽く首を回して辺りを見渡すと、小田美端がこっちを見ていた。小田か?
『お前か?』
回って来た紙の裏に書いて、とりあえず訊いてみる。
暫くしてから、小田が小さく、だがしっかりと首を横に振って否定した。口では声の無い大声を上げている。なんだ?
『唯 子 よ !』
やっと聞き取れて、言われた通りに菊地唯子の席を見ると---彼女は空気椅子をしていた。そろそろ授業が始まって30分程経つ。もしかして、ずっとああやってたのか?何故?
俺が見ているのに気付いた菊池は、ノートを契り何かを書き込んだ後、それを回して来た。
『ゲームは、空気椅子耐久レース』
だから何故!!?
全力でつっこみに行って椅子に座らせたくなったが、いかんせん授業中だ。
紙切れを裏返すと続きはあった。
『バトンタッチ』
もう限界だ。
「ビックリしたよ~!荻野くん急に立ち上がって唯子のとこ行くんだもん」
授業が終わってすぐに話し掛けて来たのは別所だ。今日も見るからに女子高生な格好をしている。美端も一緒だ。
そう、耐え切れなくなってやってしまったのだ。菊池を椅子に座らせるという事を。
「皆気付いてたけど、ねぇ~?」
「授業だったし、動かなかったよね」
ツッコミ体質の俺の前にボケ担当がいるのが悪い。
ただ、毎回こうでは俺の授業中の態度点が怪しくなってしまう。
「別所」
「ん?なに?」
「今度からお前が菊池のボケを阻止しろ」
「な、なんで私!?」
「俺よりも席近いだろ?」
「どっこいどっこいよ!!」
確かに、俺と別所の席は菊池の席に近いとは言えない。
「しかしだな、俺が盛大なツッコミをするより、お前がこっそり諌めてやった方が菊池のためにも良いと思わないか?」
口からでまかせなら任せとけ!
案の定、別所は俺の言葉に「うぐ…」と唸っただけだった。
「じゃ、そういう事で。宜しく頼んだぞ」
ポン、と肩を叩くと、諦めたようでがっくりと項垂れてしまった。悪いがしょうが無い。
こうして俺はきちんとした授業時間を手に入れた。
一方別所は、菊池がボケない事を祈るのが日課になったそうだ。